とけない雪をさがしに
雪の積もる廃駅のベンチで、出水はぶるりと身を震わせた。トリオン体には夏も冬もないはずだが、ただでさえ屋根とベンチくらいしかない殺風景なこの駅を真っ白な雪が覆い尽くしている光景は、どうにも寒々しく感じられる。この体にはとうに慣れた気でいたが――少々認識が甘かったのだろうか。目の前では、幼馴染が童謡の犬よろしく雪の上を駆け回っている。寒さなど微塵も感じず、楽しく雪遊びに興じているようだ。まったく、うらやましいことで。
「本当はねこ座じゃなくていぬ座なんじゃねーの」
届かせるつもりもない声量でぼんやり呟けば、は遊ぶ手を止めてくるりと振り向いた。そういえば聞こえるんだった、と彼女の短髪を見て思い出す。はむすっと頬を膨らませ、お決まりの抗議とともに雪玉を投げつけてきた。
「すぐそういうこと言うんだから。わたしはれっきとしたねこ座ですよーだっ」
「うおっ、あぶね!」
間一髪で避けると、後ろの掲示板にぶつかった雪玉はべしゃりと潰れ、さらさらと流れていく。次いで二発三発と雪玉が飛んだが、粉雪ではまともに固まらずコントロールがきかないようで、どれも的を外してしまった。
「む、次は当てるからね!」
「この雪じゃ無理だろ、もうちょっと溶けた雪じゃねえと」
「えーっ、これって素手で触ったら溶けるかなあ」
はグローブを外して雪玉を作り始めた。しかし、トリオン体の手でいくら雪を握っても思うように固まらない。出水もホームの下に降りると、のそばにしゃがみ込む。どうだ、と顔をのぞき込めば、はゆるゆると首を横に振った。
「ぜーんぜんだめ」
「おまえがさらっさらの粉雪がいいって言ったからじゃねえの」
雪のマップで個人戦をしよう、と持ちかけてきたのはだった。超スーパーパウダースノーがいい! と設定を決めたのもである。合点のいった顔をしたは、すぐに気を取り直してぱんぱんと雪を払った。
「じゃあ今度はぼたん雪でリトライ!」
「おれ付き合わねーかんな」
「なんでよ~」
口を尖らせて非難がましく睨み付けてくるに、出水は肩をすくめた。
「真夏に雪マップなんかそうやってられるかよ。冬になったらな」
「冬はちゃんと外でやるもん」
「風邪引くぞ」
「引きません~」
「馬鹿は風邪引かないって言うけど、あれ嘘だからな?」
「ば・か・じゃ・な・い!」
「うわっ雪かけんな!」
Up:2022.08.06
title by ふたりへのお題ったー
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