(ようやく会える)
中学生のときから、は紙の手帳を愛用している。ここ数年、もといボーダーに入ってからの相棒は文庫本サイズのデイリータイプだ。シンプルな装丁の手帳に布製のカバーと透明なビニールカバーがついていて、今は隊服と同じオリーブグリーンの布カバーを使っている。豊富なカラーバリエーションから一つを選ぶのは悩ましく思えたが、この色を見つけた途端に即決した。かつて父が愛用していた手帳もちょうど似たような色をしていたことを、はその時思い出した。
布カバーとビニールカバーの間に好きなものを挟み込めるので、気分でデザインを変えられるところもお気に入りポイントのひとつである。季節の花のステッカーを挟んでみたり、可愛い包装紙をブックカバーのように手帳本体につけたりとアレンジ方法はさまざまで、忘れてはいけない予定などを書いたメモを挟んでおくこともある。ボーダー絡みの書類や学校の補講関連など、なにかと提出物や顔出しが多いには心強い相棒だった。四色ボールペンもすっきり収まる太めのペンホルダーも気が利いている。
は毎晩、寝る前に手帳を開く。一日を振り返りながら今日あったことや思ったことを書き付けて、明日の予定を確認してからベッドに入る。体調が悪い日や忙しい日は一言二言で終わっていることもあるけれど、それはそれでいい記録になるものだ。
今日の日記を終えてページをめくると、翌日の日付が赤い丸で囲まれている。赤はボーダーのシフト日を示す色だ。日付の隣にはシフト時間が書いてある。そしてその下には、私用を示す緑のペンで「おかえり~!」という嬉しそうな字と、それを囲むように星やハートマークが踊っていた。数日前からこの手帳の中でカウントダウンをして、ずっと待ち望んだ明日だった。明日の夜、出水が遠征から帰ってくる。
「公平びっくりするかなぁ、たぶんするよね」
は自然と頬が緩むのを感じながら、星とハートをいくつか書き足した。本当はまだまだ足りない気分だけれど、夜は迅から頼まれた件もある。明日の日記は書きたいことが山盛りになるはずだから、なるべくスペースを残しておかなければ。
積もる話はたくさんある。この日記に残したこと、書き切れなかったこと、書かなかったこと。でも一番に伝えたいのは、たった一言だけだった。おかえりと、ただ一言。はやく伝えたい。
Up:2022.08.06
title by ふたりへのお題ったー
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