トラブルでラブホに行った
初めてトリオン兵と対峙した時だって、の心臓はここまで暴れたりはしなかった。が記憶している限りでは、おそらく史上最大の大暴れである。熱いシャワーをざあざあと頭から浴びながら、はぎゅっと目を瞑る。
先程まで冷え切っていた身体は充分に温まった。出水はゆっくりで良いと言っていたが、それでも寒い思いをして待っているはずだ。はやく代わってあげないと。……頭では分かっているのに、の手はなかなかシャワーを止めようとしない。
なぜなら。
シャワーを止めたら、バスルームを出なくてはいけない。
バスルームを出たら、ベッドルームに行かなくてはいけない。
ベッドルームには、――出水がいる。シャワーの熱気に曇るガラスの向こうに、いつの間にか自分よりずっと広くなっていた出水の背中が見える。
キスこそしなかった。の唇は、まだ出水の温度を知らない。このお湯より冷たいのか、あついのか、はまだ知らない。
けれど、出水の眼差しのあつさなら、もう知っている。唇に触れる指の優しさを知っている。
「……どうしよう」
進みたいのか戻りたいのか、それすらも分からない。ただ、分かっているのは、出水が手を引く方向がどちらでも、きっと自分は拒まない、ということだけだった。
Up:2019.07.02
twitterタグ #存在しない小説の台詞
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