幽霊騒動

「はあ? ユーレイぃ?」
 こくんと頷く幼馴染に、出水は深い溜息を返した。ボーダーの戦闘員なんて、最先端の超科学で飯を食っているような人間だ。それが非科学の代名詞のようなものに怯えの色を見せるとは、にわかに信じがたい話である。
 つい先日も、毎年恒例のB級ホラー鑑賞会を開いた時に「こういうのはありえないって分かってるからいいの」と言っていたのだ。てっきり、そんなものは信じていないのだと思っていたのに。
 幽霊ねえ。呟くように繰り返し、出水は視線をスマートフォンのゲーム画面に戻した。
「あっ信じてないでしょ? ほんとなんだってば!」
「わかったわかった」
「んもう!」
 あしらうような態度の出水に、は唇をへの字にする。話くらい聞いてくれてもいいのに。拗ねたような声にも出水は無反応だ。耳を貸す気はないらしい。
 しばらく熱心に出水の横顔を見つめていただったが、出水はちらとも視線を寄越そうとしない。いい加減折れたのか、は寂しそうに溜息を吐いた。
「……いいよ。公平には頼らない」
 は立ち上がると、手早く荷物をまとめて出水の部屋のドアノブに手をかける。カチャリと音がして、出水はようやく顔を上げた。
「どこ行くんだよ」
「帰る」
「まだ早いだろ。おばさんたち遅いんだし」
「ここにいたって同じだもん。公平、ゲームしてるし」
 話聞いてくれないし。責めるような眼差しに、出水はきまり悪そうに目を逸らす。その沈黙を、引き止める意志なしと解釈したは、「それじゃ」と冷たく告げて、今度こそドアを開けた。
「わかったよ」
 溜息混じりの声に、の足がぴたりと止まる。
「話、聞けばいいんだろ」
 観念したように言ってから、出水はスマートフォンをベッドに投げる。振り向いたは、先程の不機嫌が嘘のように明るく笑っていた。




Up:2019.07.02
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