出られない部屋
は脱兎のごとく逃げ出すと、出水から一番遠い壁にびたっと背中を貼り付けた。「ぜっったいに嫌っ!」
渾身の力で叫び、はじぃっと出水を睨みつける。全身で出水を警戒する姿は、毛を逆立てる猫を彷彿とさせた。うっかり手を伸ばせば容赦なく引っ掻かれてしまいそうだ。これまでの長い付き合い、喧嘩したことは数あれど、ここまでの拒絶は初めてである。
出水は近付くことを諦め、仕方なくその場に胡座をかいて座り込んだ。
「じゃあおまえ、他になんか方法あんのかよ」
言葉を詰まらせるに、出水は苛立たしげに舌打ちする。そんなものがないことくらい、にだって分かっているはずだ。なのに拒絶の姿勢を崩さないのだから面白くない。
出水は機嫌の悪さを一切隠さず、を責めるような目で見据えた。
「トリガーもスマホもねーのに、どうやって出る気だよ? 壁も壊せない、連絡も出来ない、食料も水もない。こんなとこで干からびて死にてえのか? おれはやだね」
「じゃあ、……じゃあ公平は、こんなとこでえっちして平気なの!?」
「死ぬよりはマシだろ」
「わたしはやだ!」
……はじめてなんだもん。消え入りそうな声で呟いて、はずるずるとしゃがみ込んだ。
Up:2019.07.02
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