「もうやだっ公平のばか! 公平なんかきらいっ!」
 バンッと大きな音を立て、はテーブルに両手をついて立ち上がった。その勢いで食器ががちゃんと悲鳴を上げる。
 顔を真っ赤にして眉をつり上げるに対し、正面に座る出水はどこ吹く風だ。メロンソーダをストローで啜りながら、出水は呆れたような表情でを見上げた。
「でけー声出すなよ。周りに迷惑だろ」
「っ!」
 ハッと辺りを見回せば、好奇の視線を向けていた隊員たちがあからさまに目を逸らすのが分かった。は慌てて声のボリュームを絞ると、「誰のせいよ」と出水を睨みつけながら座り直す。
「口喧嘩で勝てねえからって、嫌いはねえだろ。小学生じゃあるまいし」
「うるさいなっ、きらいなものはきらいなの! ていうか、きらいじゃなくて、だいきらいだから!」
「ほーお?」
 嫌い嫌いと連呼されて、今度は出水が眉をつり上げる番だ。本気ではないと分かっていても面白くない。出水はそっぽを向いてしまった恋人の横顔を見つめながら、素早く反撃の作戦を立てた。
「おれはのこと、大好きだけどな」
「……は、はあ!?」
 出水の狙い通り、は弾かれたように振り向いた。先程よりもずっと赤い顔で、口をぱくぱくさせている。二の句が継げない標的にとどめを刺すべく、出水は唇をぺろっと舐めてから自信たっぷりに笑った。
「また好きって言わせてやるから、覚悟しとけよ」

言うまで逃さない




Up:2019.06.14
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