姫抱っこチャレンジ
両足が床を離れるのが心もとなく感じたのは、抱き上げられたその瞬間だけだった。の膝裏と背中に回された出水の両腕はしっかりと彼女の体を支えている。出水の首に回していた腕から力を抜いて、は「おお」と感嘆の声を上げた。
「さてさん、なんか言うことは?」
「なまいき言ってすみませんでした!」
「よろしい」
の素直な謝罪に、出水は満足げに頷いた。ことの発端は「公平って米屋と並んでると細っこく見えるね」というの無邪気なひとことである。そこから二転三転し、の言うようなもやし男児(さすがのもそこまでは言っていないのだが、出水はそのように受け取ったらしい)ではないことの証明として、を横抱きにしてみせることになったのだ。いわゆるお姫様抱っこである。
「トリオン体じゃないと無理だと思ってた」
「おれのことなんだと思ってんの」
「弾バカ」
「このやろう」
本来なら額のひとつやふたつ、バチンと指で弾いてやりたいところだが、今の出水は両手がふさがっている。仕方なしに軽く頭突きを食らわせると、はけらけら笑いながら「ごめんごめん」と自分と出水の額をなでた。
Up:2018.05.22
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