診断メーカーより「幸せになれなくてもいい」
思い出すのは、いつだって別れ際の笑顔だった。獄寺は一度も好きだとか愛してるだとか甘い言葉を吐いたことはなかったし、私の前で笑顔を浮かべたことだってろくになかった。獄寺が笑っていたのは綱吉の前だけだ。普段は眉間にしわを寄せて不機嫌そうにしているばかりで、私はそのうちしわが取れなくなるんじゃないかとよく心配したものだ。寝ているときにこっそり眉間に指を当てて、しわが残りませんようにと念じたこともあるくらいだった。
それなのにあの日の獄寺は、今まで見たことないくらい穏やかに笑って言ったのだ。お前のことが好きだった、だから幸せになってほしい、なんて。
ひどい呪いだ。
普通の幸せというものが獄寺なしでしか成り立たないのなら、私はそんなもの欲しくなかった。世の中の恋人たちが当たり前に享受している幸福の全て、この先の人生でまったく味わえなくなるとしても、それでもわたしは獄寺のそばにいたかったのに。
いつになったらこの呪いは解けるのだろう。あの笑顔を思い出すたびに、私はからっぽの右手をひとり握りしめる。
Up:2018.03.13
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